Audible版「私は女になりたい」—本当の自分を探して 一人の男を好きになった。自分にとって最後の恋になるだろう、という強い予感があった。人として、女として、生きるために。直木賞作家が描く「最後」の恋。本当の、恋愛小説。
玲央(れお)は、小さい頃からずっと違和感を抱えていた。
鏡に映る自分の姿と、心の中の「本当の自分」が一致しない気がする。だけど、その気持ちを誰にも言えなかった。言葉にした瞬間、すべてが壊れてしまう気がしたから。
「このまま、ずっと隠して生きていくしかないのかな……」
そんな思いを抱えながら過ごしていたある日、玲央は偶然、Audibleで**『私は女になりたい』**というタイトルのオーディオブックを見つけた。
試しに再生ボタンを押した瞬間、優しくも力強い語りが耳に響く——。
この物語は、「自分らしく生きること」に悩む一人の人間の、切実で、まっすぐな想いを綴ったノンフィクションだった。
「私が私であるために、私は女になりたい」
その言葉が玲央の胸に突き刺さる。
語り手の声には、迷いも、葛藤も、痛みも、そして希望も詰まっていた。
——どうして、自分は「こうでなければならない」と思っていたんだろう?
——どうして、「ありのままの自分」を否定し続けていたんだろう?
気づけば、玲央の頬を涙が伝っていた。
物語が進むにつれ、玲央の心に少しずつ光が差し込んでいく。
「私は、私のままでいいんだ」
オーディオブックが終わる頃には、玲央の中で何かが変わり始めていた。
本当の自分を隠して生きるのではなく、少しずつでもいいから、自分を受け入れてあげたい——そう思えた。
そして、玲央はスマホを手に取り、初めて親友にメッセージを送った。
「ちょっと話したいことがあるんだ」
『私は女になりたい』——それは、玲央にとって「自分らしく生きる勇気」をくれた物語だった。
夜の静けさの中で、玲央はそっと、深く息を吸った。
新しい一歩を踏み出すために。