婚活の裏に潜む闇と狂気――秋吉理香子『婚活中毒』で描かれる、幸せを求める人々の予想外の結末。何か裏があると感じた沙織は、これまで杉下が紹介された女性たちに会いに行くが、驚愕の事実が……
秋吉理香子の短編集『婚活中毒』は、結婚を望む男女の心の奥底に潜む欲望や狂気を描いた、全4編からなるミステリーストーリー集です。「理想の男」「婚活マニュアル」「リケジョの婚活」「代理婚活」という各編では、婚活を通じて起こる予想外の展開や人間の本性が浮き彫りにされます。
「理想の男」では、40歳を目前にした沙織が結婚相談所で出会った理想的な男性の裏に隠された秘密に迫ります。「婚活マニュアル」では、婚活マニュアル通りに行動する男性が、街コンで出会った女性との関係に翻弄されます。「リケジョの婚活」では、理系女子の恵美が、お見合い番組で一目惚れした男性を射止めるため、データ分析を駆使して奮闘します。「代理婚活」では、結婚に消極的な息子を心配する両親が、代理で婚活を進めるうちに、思わぬ展開を迎えます。
各編とも、婚活という現代的なテーマを通じて、人間の欲望や恐怖、そして予想外の結末が描かれています。読者は、登場人物たちの行動や心理に共感しつつも、その裏に潜む真実に驚かされることでしょう。
秋吉理香子の筆致は、軽快でありながらも緻密に構成されており、読者を物語の世界へと引き込みます。短編ながらも、それぞれの物語が持つ深いテーマ性とサスペンス要素が、読後に強い印象を残します。
『婚活中毒』は、婚活を経験したことがある人はもちろん、ミステリーや人間ドラマが好きな読者にもおすすめの一冊です。現代社会における結婚や人間関係の複雑さを、エンターテインメントとして楽しみながら考えることができる作品となっています。