【京極堂の原点】『中禅寺先生物怪講義録』!戦後昭和の高校で怪異が連続発生!国語教師・中禅寺秋彦が膨大な知識とロジックで「妖怪」の正体を暴く!ライトに楽しめる「学園物怪ミステリー」の決定版!

📚「憑き物」を落とす前夜!中禅寺先生が解き明かす昭和怪異録

舞台は、戦後の傷跡が色濃く残る昭和23年(1948年)の東京。後の京極堂、すなわち稀代の「憑き物落とし」となる中禅寺秋彦が、新制高校の国語教師として教壇に立っていた頃を描くのが、この『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』です。

物語は、好奇心旺盛な女子高生・日下部栞奈(くさかべかんな)の視点を通じて展開します。彼女の周囲で次々と発生する怪異にまつわる奇々怪々な事件。彼女は助けを求めるように、仏頂面だが頼れる中禅寺先生が待つ図書準備室の扉を開けるのです。

💡「京極堂」の知識とロジックをライトに堪能

この作品の最大の魅力は、「京極堂シリーズ」の醍醐味である膨大な民俗学・伝承の知識と、そこから繰り出される論理的な推理を、非常に読みやすい「学園ミステリー」の形に落とし込んでいる点です。

本家シリーズの重厚な文体とは異なり、本作は、女子高生である栞奈が持ち込む日常の「ちょっと不思議な事件」が中心。落とし主が3人も名乗り出た財布の謎、深夜の学校で聞こえる奇妙な音など、怪異に見える現象を、中禅寺先生が「妖怪講義」を通して徹底的に分析し、怪異の正体=事件の真相をロジカルに解き明かしていきます。

京極堂ファンにとっては、まだ「京極堂」として確立する前の中禅寺先生のクールで探偵的な側面が堪能できるのがたまらないポイントです。

💬私の感想:魅力的なコンビと時代背景への没入感

私がこの作品を読んで特に引き込まれたのは、栞奈と中禅寺先生のコンビネーションです。栞奈の前のめりな好奇心と行動力が事件を呼び込み、それを先生が知識と仏頂面で受け止めるというバランスが絶妙です。先生の「世にも不可解なことはない」という決め台詞が出るたびに、スカッとさせられます。

また、戦後間もない昭和23年という時代設定も魅力の一つです。戦後の混乱と、新しい学校制度、そして街にまだ残る古い迷信や因習が、怪異をより不気味に、そして事件をより複雑にしています。その時代背景が、物語に独特のノスタルジックで不気味な雰囲気を与えています。

「難しい小説は苦手だけど、京極夏彦の世界観に触れてみたい」「怪談や都市伝説を論理的に解き明かすのが好き」という方に、この『中禅寺先生物怪講義録』は最高の入り口となるでしょう。