ベトナム人殺害容疑のロシア人ヴァイオリニストを追う公安エース倉島警部補──中国担当官の暗躍が試す、緊迫の国際捜査第6弾!

公安部外事一課の敏腕捜査官・倉島警部補は、ロシア外相来日に伴う随行員の行動確認を命じられる中、突如発生したベトナム人殺害事件の容疑者として“ロシア人音楽家”が浮上することを知る。外交儀礼と治安維持の狭間で揺れる捜査方針に、倉島の冷静沈着な判断力が早くも試される展開だ。

事件の背後には、ロシアとベトナム、そして中国という三か国が暗躍しており、倉島は捜査線上で予想もしない中国担当公安捜査官・盛本と対峙することになる。盛本の介入は、単なる越権行為か、それとも国家間の見えざる思惑が絡む“政治スパイ大戦”の布石か──両者の緊張感あふれる駆け引きが物語を一層スリリングに彩る。

本作では、シリーズ前作までの“クールな捜査劇”に加え、国際情勢を映し出すリアルな舞台設定と、“公安エース”としての倉島の人間味を深く掘り下げている。特に、ベトナム人被害者の背景やロシア人容疑者のプロフェッショナルとしての矜持を描く群像劇は、本格派ミステリーファンのみならず、国際政治ドラマを好む読者も虜にするだろう。

巻末には、公安部外事一課の組織構造や実際の捜査フローを解説するコラムが収録され、リアリティと読み応えを両立させている。2023年11月8日刊行の文春文庫版は325ページ、825円(税込)という手頃な価格で、長時間にわたる緊迫の捜査劇を余すところなく楽しめる。

公安捜査の最前線を描く今野敏の筆致は、事件現場の冷たい空気感や、取り調べ室での掌握戦略を鮮烈に活写し、ページをめくる手が止まらない。緊張のクライマックスで明かされる“真の黒幕”を知ったとき、読者は必ずや「次巻が待ちきれない」と感じるはずだ。

こんな方におすすめ

  • 国際犯罪と政治工作が交錯する本格ミステリーを求める方
  • 公安捜査の組織論や捜査手法に興味があるビジネスパーソン
  • シリーズを通して成長する主人公のダイナミズムを楽しみたい読者
  • 緊迫感あふれるクライマックスを味わいたいエンタメ小説ファン