『図説 日本呪術全書 普及版』――稀少図版280点収録、陰陽道・修験道・密教・神道ほか多彩な流れをビジュアルでたどる、現世利益を支える呪術大全―秘められた闇の力の系譜に鋭く迫る無二の一冊。稀少図版280点あまりを収録。

『図説 日本呪術全書 普及版』は、陰陽道、修験道、密教、神道・古神道など日本に伝承される呪術・呪法を宗派別に分類し、史料や稀少図版約280点を豊富に収録したビジュアルガイドです。呪術を「まじない」「魔術」と単純に捉えるのではなく、神仏の力で災厄を避け、恩恵を得る「息災」と「調伏」の二重性を掘り下げ、古来より現世利益と不可分の関係にある呪術文化の全体像を示します。

1.本書の概要

本書は、出版社・原書房の人気シリーズが待望の普及版として再編集されたもので、単行本ソフトカバー版・全464ページのボリュームを誇ります。著者の豊嶋泰國氏は、日本の宗教文化と呪術史研究の第一人者であり、歴史文献と口承を織り交ぜながら解説を展開しています。

稀少図版は280点以上をカラー・モノクロで掲載し、古文書や絵巻、呪符や護符の実物写真など、多角的な資料を通して読者を呪術世界へ誘います。

2.宗派別構成と目次

本書は以下の八章で構成され、日本の主要な呪術流派を体系的に学べる構成です。

  1. 密教系の呪術(真言密教・天台密教など)
  2. 修験道系の呪術(山岳信仰と呪法)
  3. 陰陽道系の呪術(怨霊鎮圧・祓いの術)
  4. 日蓮宗系の呪術(題目に込める霊験)
  5. 神道・古神道系の呪術(神祓い・祝詞)
  6. 浄土宗系の呪術(念仏と儀礼)
  7. 禅宗系の呪術(禅の呪文と修法)
  8. 教派神道系の呪術(近代神道と教派)。

各章は宗派の歴史背景から代表的な呪法・典礼、儀式具、逸話をバランスよく紹介し、呪術の実践法とその信仰的意味を明快に解説します。

3.呪術の本質 息災と調伏

辞書的に「呪術」は「まじない」「魔術」と訳されがちですが、本書では「神仏あるいは超自然の威力で災厄を防ぎ、恩恵をもたらす」行為として位置づけます。仏教用語の「陀羅尼(呪文)」を起源とし、「呪(のろい)」が「祝い」の意味も含むことを示すことで、呪術のポジティブな側面を強調しています。

また、呪術は現世利益と切っても切り離せず、農作物豊饒や疫病退散といった集団的利益をもたらす儀礼として社会を支えてきた歴史的役割にも光を当てます。

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4.ビジュアルガイドの魅力

  • 稀少図版280:古写本や寺社所蔵の秘符コレクションを含む貴重資料。
  • 詳細な解説キャプション:図版ごとに出典・作法・効用を併記し、資料の理解を深める。
  • コラム・史話:呪術にまつわる怪異譚や人物伝を随所に配置し、読み物としても楽しめる構成。

5.読者へのメッセージ

本書は、呪術やまじないを一過性のエンタメとしてではなく、日本文化の根幹を成す精神世界として学びたい読者に最適です。学術的な信頼性とビジュアルの充実を両立させた一冊は、研究者や歴史愛好家はもちろん、『呪術廻戦』など現代の妖怪・呪術ファンタジーを楽しむ層にとっても、知識の深みとリアリティを提供します。ぜひ手に取り、現世利益と祓いの呪力が息づく呪術世界の全貌をご堪能ください。