【和風あやかしファンタジー続編】人ならざる者たちが暮らす隠世の老舗宿を舞台に、料理の力で絆を紡ぐヒロインの新たな試練!大切な居場所と仲間を守るため、若き女将代理が立ち上がる、心温まる感動の物語、再始動!

守りたい居場所と絆の力:『かくりよの宿飯』が描く、優しさに満ちた新たな試練

『かくりよの宿飯』は、妖(あやかし)たちの世界「隠世(かくりよ)」を舞台に、女子大生のが、得意の料理の力で、老舗宿〈天神屋〉での借金返済と、祖父が遺した因縁を乗り越えていく、心温まる和風あやかしファンタジーです。

前作で南の地の宿〈折尾屋〉での困難な試練を乗り越えた葵は、ようやく自分の居場所である〈夕がお〉へと帰還します。穏やかな日常、美味しい料理、そして信頼できる仲間たち。葵にとって、それは何物にも代えがたい大切な時間です。

しかし、安息の時間は長くは続きません。物語が再び動き出すとき、〈天神屋〉にかつてないほどの大きな危機が迫っていることが明らかになります。

本作の最大の魅力は、主人公・葵の「成長」と、彼女が料理を通して築き上げた「絆」の深さにあります。

当初、葵は、祖父の借金のカタとして鬼神の旦那様のもとに嫁がされるという理不尽な状況に置かれました。しかし、彼女は逃げることも、運命を嘆くこともせず、唯一の武器である「美味しい料理」で、頑なな妖たちの心を開き、信頼を勝ち取ってきました。

今回の新たな危機は、単に宿の経営問題を超え、葵が隠世で手に入れた全て――信じてくれる仲間たち、そして愛すべき居場所そのものを揺るがす、根源的な問題となります。

守りたいものがあるとき、人は強く、優しくなれます。葵の料理は、もはや単なる食事ではありません。それは、人々を繋ぎ止める「希望」であり、厳しい運命に立ち向かうための「力」そのものです。

この物語を読んでいると、胸が熱くなるのは、葵が周囲の妖たちを、立場や種族を超えた「家族」のように大切に思っていることが伝わってくるからです。鬼神の旦那様との、ゆっくりと育まれる温かい関係性はもちろん、〈夕がお〉の個性豊かな仲間たち、そして一度は敵対した宿の者たちとの間にも、確かな信頼と愛情が生まれています。

幾多の出会いと絆に育まれた葵は、もうかつての孤独な少女ではありません。「若き女将代理」として、愛する居場所と仲間を守るため、彼女は再び困難に立ち向かう決意をします。

絶望的な状況の中で、葵がどんな料理で、どんな新しい絆を紡ぎ、そしてどのようにしてこの危機を乗り越えていくのか――。その過程には、必ず読者の心を温かく包み込み、涙を誘う感動が待っていると強く感じます。優しさと美味しさが詰まった極上の物語を、ぜひご堪能ください。