地獄楽、極楽浄土の地で繰り広げられる人間と天仙の全面対決。死罪人と執行人が手を取り合い、死地からの生還を懸けた絆を紡ぐ。石隠れ衆の介入で加速する因縁の物語。生命の輝きを問う圧倒的スケールの忍法浪漫活劇。

死を待つだけの罪人と、その首を刈るために選ばれた執行人。相容れるはずのない両者が、極彩色の絶望が渦巻く孤島で背中を預け合う。賀来ゆうじ氏が描く『地獄楽』は、その美しい地獄の光景とともに、人間の業と愛、そして生への執着を鮮烈に描き出した、魂を揺さぶる叙事詩です。

物語は、島を統べる異形の化物「天仙」の居城へと辿り着いた一行の姿を映し出します。そこは、不老不死の仙薬を巡る狂気の中心地。かつては互いに刃を向けた死罪人と山田浅ェ門たちが、今は生き延びるために、そして守るべき誰かのために、己の誇りを懸けて共闘を選択します。法も身分も、昨日までの遺恨も関係ない。ただ「生きて帰る」という一点において結ばれた彼らの姿は、あまりにも気高く、見る者の胸を熱くさせます。

しかし、運命は非情です。島を脱出しようとする画眉丸たちの前に立ち塞がるのは、人知を超えた力を持つ天仙たち。さらに幕府からは、冷徹なまでの正義を掲げる山田浅ェ門殊現をはじめとする追加上陸組が送り込まれます。その中には、画眉丸の平穏を奪い去ろうとする石隠れ衆の影までもが混じり合っています。島の内外から迫り来る脅威に対し、人間たちが知恵と絆を武器に挑む全面対決は、まさに手に汗握る死闘の連続です。

実際に物語を追っていくと、美しくも悍ましい島「神仙郷」の描写に息を呑みます。色鮮やかな花々に埋め尽くされた処刑場のような光景は、生と死が表裏一体であることを残酷なまでに突きつけます。その極限状態の中で、妻のもとへ帰ることだけを願う画眉丸のひたむきな想いや、執行人としての使命と情のはざまで揺れる佐切の葛藤は、読者の心に深く突き刺さります。彼らが流す血と涙こそが、この地獄における唯一の本物の輝きに見えてくるのです。

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本作の最大の魅力は、アクションの激しさもさることながら、極限に追い詰められた人間たちが剥き出しにする「本性」の美しさにあります。誰かを守りたい、あるいは自分らしくありたい。そんな純粋な祈りが、残酷な宿命を打ち砕く力となる瞬間、この物語は単なる娯楽を超えた深い感動をもたらしてくれます。

天仙という神に近い存在を前に、不完全で脆い人間がどう抗うのか。激化する戦いの果てに、彼らが掴み取るのは希望か、それとも虚無か。命の火花が散るこの壮絶な決戦の行く末を、ぜひその目で見届けてください。最後の一瞬まで、彼らの生き様から目が離せなくなるはずです。