Audible版 光のとこにいてね たった1人の、運命に出会った古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
耳で感じる、あの日の光──Audible版『光のとこにいてね』
電車の中の再会
夕暮れ時の電車。窓の外には、沈みゆく太陽がオレンジ色の光を投げかけていた。
紗季(さき)は、スマートフォンの画面を見つめ、そっとイヤフォンをつける。
そこに表示されていたのは、Audible版『光のとこにいてね』の再生ボタン。
「本を読む時間はないけど……聴くなら、いけるかもしれない」
そう思い、再生ボタンを押す。
「光のそばにいるとね、私は私でいられるの」
静かに語られる言葉が、紗季の耳に溶け込む。
物語は、少女・結と、幼なじみの光の、かけがえのない時間を描いていた。
──いつもそばにいた、特別な存在。
──けれど、時が経つにつれて変わっていく距離。
──「光のとこにいたい」と願いながらも、離れざるを得ない現実。
紗季は、胸がぎゅっと締めつけられるのを感じた。
なぜなら、かつての自分も同じだったから。
昔、大切に想っていた人がいた。
けれど、環境が変わり、気持ちを伝えられないまま、時間だけが過ぎていった。
「あのとき、私は何か言えたのかな……?」
物語の中の結と光のやりとりが、まるで過去の自分の心をそっと撫でるようだった。
電車のアナウンスが流れ、目的の駅が近づく。
でも、紗季は降りたくなかった。
このまま、もう少しだけ、物語の中にいたかった。
──本を開かなくても、物語は耳から心に届く。
──言葉の一つ一つが、まるで目の前で語りかけられているみたいに。
扉が開く直前、紗季はスマホの画面を見つめ、小さく微笑んだ。
「続きは、帰り道で聴こう」
Audible版『光のとこにいてね』──それは、あの日の自分とそっと向き合う、音の物語。