その賞は、栄光か、それとも破滅か。文学賞を巡る嫉妬と欲望の群像劇。天才と凡人の間で、あなたは誰に感情移入する?

文学界の最高峰、芥川賞・直木賞を思わせる、とある文学賞「啓文賞」。その栄光を巡る人々の、嫉妬、欲望、そして秘められた過去を描く、長篇小説『PRIZE―プライズ―』が、文藝春秋から登場しました。この物語は、単なる業界小説ではありません。人間の本質に鋭く切り込んだ、壮大な群像劇です。

物語の中心にいるのは、三人の作家たち。

一人は、天才的な才能を持ちながらも、世間から忘れ去られようとしているベテラン作家。彼は、再び文学界の頂点に立つために、啓文賞受賞に執念を燃やしています。

二人目は、SNSで絶大な人気を誇る、新進気鋭の若手作家。文学の伝統を軽んじるかのような言動で世間を騒がせ、啓文賞の候補に選ばれたことで、周囲から大きな注目を集めます。

そして三人目は、地道に努力を重ねてきた、実直な中堅作家。天才でも、時代の寵児でもない彼が、初めての受賞を夢見て、静かにその時を待ちます。

この三人の作家を中心に、彼らの才能に嫉妬する者、彼らを利用しようとする者、そして彼らの才能を信じる者など、様々な人々の思惑が交錯します。物語は、彼らの視点を入れ替えながら、受賞までの数ヶ月間を多角的に描いていきます。

この作品の最大の魅力は、「賞」というものの本質を深く掘り下げている点にあります。賞は、単なる名誉や富ではありません。それは、作家の人生そのもの、そして彼らが築き上げてきたすべてを肯定する、唯一無二のものです。しかし、同時にそれは、人々の欲望や嫉妬を煽り、人間関係を破壊する、恐ろしい「怪物」でもあるのです。

天才でありながら世間に受け入れられない苦悩、凡人であることの焦り、そして、才能だけで評価されることへの葛藤。それぞれの作家が抱える苦悩は、読者の心に深く突き刺さります。あなたは、誰の心情に最も感情移入するでしょうか?

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また、物語に登場する編集者や選考委員、出版社の関係者たちの描写も秀逸です。彼らは、作家の才能を信じながらも、ビジネスとしての成功を追求せざるを得ない、という板挟みの状況に置かれています。文学という「夢」と、出版という「現実」の狭間で揺れ動く彼らの姿は、この物語に深いリアリティを与えています。

物語のクライマックスは、受賞作が発表される授賞式です。三人の作家の運命が交錯し、物語のすべての伏線が回収される瞬間は、まさに圧巻です。栄光を手にするのは誰なのか?そして、その栄光の裏で、何が失われるのか?最後まで予測不能な展開に、あなたはきっとページをめくる手が止まらなくなるでしょう。

『PRIZE―プライズ―』は、文学を愛する人はもちろん、夢を追いかける全ての人に、そして、人間の欲望や嫉妬という感情について考えたい全ての人に、自信を持ってお勧めできる一冊です。この物語は、読み終えた後も、あなたの心に深い問いを投げかけ続けるでしょう。

あなたは、この「プライズ」がもたらす結末を、見届ける勇気がありますか?