「銀座の小さな宝物」Audible版 銀座「四宝堂」文房具店: (小学館)銀座のとある路地の先、円筒形のポストのすぐそばに佇む文房具店・四宝堂。創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店だ。
プロローグ
銀座の一角に佇む古風な文房具店「四宝堂」。現代的なビルが並ぶ街並みにあって、そのレトロな佇まいは異彩を放っていた。小さな木の看板には「四宝堂 文房具店」と手書きの文字。どこか懐かしく、温もりを感じさせるその店は、ただの文房具店ではなかった。
主人公は出版社で働く編集者、山田美咲。仕事に追われる日々の中、ふとしたきっかけで「四宝堂」を訪れることになる。
不思議な出会い
店内は驚くほど静かで、外の喧騒が嘘のようだった。入り口のベルが鳴ると、柔らかな声で「いらっしゃいませ」と迎えるのは、年配の店主・藤堂瑞穂。彼女は古風な着物を身にまとい、その佇まいは文房具と同じように品があった。
店内には、万年筆、ノート、インク壺、封蝋(ふうろう)セットなど、どれも美しく、使う人の生活に物語を添えるような品々が並んでいた。美咲はその中に一冊の手帳を見つける。それは「記憶の手帳」と名付けられた不思議な商品だった。
「記憶の手帳」の秘密
「この手帳は特別な品です。書いたことが不思議と実現する、そんな力があると噂されているんですよ。」
店主の言葉に半信半疑ながらも、美咲はその手帳を購入。仕事で追い詰められていた彼女は、手帳に「今月の締切がスムーズに終わりますように」と書き込んだ。翌日、信じられないことに、難航していた作家の原稿が突然仕上がり、締切を無事に迎えることができた。
「ただの偶然?」そう思いつつも、美咲は次々と願いごとを書き込み、手帳の力を確かめていく。願いが叶うたびに、彼女の生活は少しずつ輝きを取り戻していった。
真実と選択
しかし、店主は言った。「手帳にはもう一つの力があります。それは、願いを書くことで自分の本当の気持ちに気づけるということ。けれど、あまり多くを求めると、失うものもあるかもしれません。」
美咲は次第に、自分が本当に何を求めているのか、どの願いが自分を幸せにするのかを考え始める。そして、ただ結果を求めるのではなく、一つ一つの行動を大切にしようと決意するのだった。
エピローグ
「四宝堂」での体験を通じて、美咲は日々の中に小さな幸せを見つけられるようになった。手帳を使い切った後も、彼女は手帳の力に頼ることなく、自分の力で願いを実現していく。
『銀座「四宝堂」文房具店』(小学館)は、文房具を通じて心を癒し、日常の中に隠れた宝物を見つける物語。聴く人の心にそっと寄り添い、忙しい日々を生きる中で大切なことを思い出させてくれるAudible版ならではの体験をお楽しみください。