事物の感覚と魔術について 百科全書的哲人による自然魔術の書 『太陽の都』で知られる、異端の修道士カンパネッラ 足かけ28年の獄中生活に物した主著の一冊、遂に完訳!

ルネサンス―― 百科全書的哲人による自然魔術の書 『太陽の都』で知られる、異端の修道士カンパネッラ 足かけ28年の獄中生活に物した主著の一冊、遂に完訳! 神を戴き、天上界のマクロコスモスは地上界たるミクロコスモスを照応する。「力」「愛」「知」を基本原理(プリマリタ)に、その視線は広く森羅万象へ――あらゆるものは「感覚」する。感覚なければ世界は混沌(カオス)と化する。神のもとに魔術は存在し、かたや似非魔術も存在し、カンパネッラはそれを暴く。魔術から科学へ、その移行期のルネサンス末期にあった「自然魔術」の大いなる隠微(オカルト)哲学体系。ヘルメス思想も色濃き、反アリストテレスの書。 「隠微(オカルト)哲学の驚くべき部分では、世界が生ける神と善智の像(かたち)で成っていて、森羅万象あらゆる部分やその粒子にも感覚が在る。その感覚は留意すべきほどに明暗が歴然とし、万事につけ一致点が見出せる。万物の理法や自然の秘密の幕の裡(うち)が明白になるのである」(本書「序」)

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トンマーゾ・カンパネッラ
南イタリア・カラブリア州の山村スティーロ生まれ。実家が貧困のため学校に通えずも神童の誉が高く、早晩詩作で頭角を現わす。14歳でドミニコ会の修道士になり、以後、修道院の図書館の本を渉猟し、反アリストテレス主義の立場を標榜。自然哲学者ベルナルディーノ・テレジオに私淑。ローマ教会から異端視され北イタリアへと逃亡、ガリレオ・ガリレイと親交を結ぶ。カラブリアに帰還後、スペイン当局の圧政下にある民衆を救おうと蜂起するも逮捕。ナポリの牢獄に足かけ28年間、ほぼ軟禁状態で過ごす。その間、旺盛な執筆力を発揮。出獄後、ドミニコ会から神学教授を授かり、異端の嫌疑の危険にフランスに亡命。パリのドミニコ会の宿坊にて死去(享年71)。邦訳に『太陽の都』(岩波文庫)、『ガリレオの弁明』(ちくま学芸文庫)、『哲学詩集』(水声社)など。

澤井繁男
1954年札幌市生まれ。札幌南高等学校を卒業後、東京外国語大学を経て、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。東京外国語大学論文博士(学術)。専門はイタリア・ルネサンス文学・文化論(特にトンマーゾ・カンパネッラ)。元関西大学文学部教授。作家としても知られる。著書に『イタリア・ルネサンス』(講談社現代新書)、『ナポリの肖像』(中公新書)、『ルネサンス』(岩波ジュニア新書)、『魔術師たちのルネサンス』(青土社)など。訳書にガレン『ルネサンス文化史』(平凡社ライブラリー)、デッラ・ポルタ『自然魔術』(講談社学術文庫)、ウィリアム J. パウズマ『ルネサンスの秋』(みすず書房)など。創作集に『澤井繁男小説・評論集』(平凡社)、『復帰の日』(作品社)他、多岐にわたる分野で著訳書多数。