凍土に刻まれた革命の序曲、蒼穹を裂く希望の戦旗――『筺底のエルピス8 -我らの戦い-』深海の暗闇を照らす最後の灯火、イェル=スサワ新帝国を揺るがす反乱軍と王権軍の死闘が、ついに頂点へ。かつて同胞だった少女侯爵エルと氷晶聖騎士レイナの運命が
長らく続いた“蒼氷の帝国”との激闘も、いよいよ終局へと雪解けを迎える。第8巻『我らの戦い』では、主人公たちがそれぞれの信念を胸に、最後の決断を下す瞬間が描かれる。物語の柱となるのは、以下の三つのポイントである。
- 氷晶聖騎士レイナの覚醒
レイナは幼い頃から帝国の冷酷な教義を叩きこまれた“氷晶聖騎士”だが、仲間との出会いによって心にひび割れが生じる。本巻では、帝国へ忠誠を誓いつつも、人としての感情を取り戻し、戦場で真の力を解放する成長譚がクライマックスを迎える。 - 少女侯爵エルの選択
反乱軍の核心人物にして、かつて帝国に仕えた少女侯爵エル=シェリル。彼女は帝国の冷酷さを誰よりも知る者でありながら、新たに芽生えた“希望”の象徴でもある。仲間を守るために己の命を賭し、最後の策略を巡らせるその姿が、物語に深い感動をもたらす。 - 智略と裏切りの聖地――氷の城塞要塞
舞台は標高五千メートルを超える氷壁の塔“ヴァルグレイヴ”。帝国と反乱軍、双方の精鋭が激突し、雪嵐と魔法が渾然一体となる戦場だ。死線をくぐり抜けながら、盟友は裏切りの刃を突きつけ、敵中の少女は涙をこぼす。ここで交わされる駆け引きが、物語の命運を左右する。
ストーリー紹介
黒い雪を降らせる氷壁の夜、帝国軍と反乱軍は死にもの狂いの総攻撃を開始した。蒼き聖剣を手に、レイナは凍てつく風の中で叫ぶ。かつて教義に縛られた少女は今、戦う意味を問い、守るべき未来を選び取る。その覚悟を胸に宿し、彼女の真の力が凍結を砕く轟音となって解き放たれる。
一方、反乱軍の指導者エルは、かつての友でありライバルでもあった王子アレンと再会を果たす。二人の記憶が交錯し、幼き日の笑顔と冷酷な現実が交差するなか、エルは大胆な誘拐作戦を敢行。帝国の指導者カイザー・オーディンと対峙し、血の誓約が交わされる。
氷の城塞要塞“ヴァルグレイヴ”を取り巻く吹雪のなか、両軍の旗が入り乱れる。砕け散る氷塊、火花を散らす魔法陣、悲鳴を上げる機械兵。戦場を駆け抜けるレイナは、敵味方を問わず苦悶の表情を見逃さない。彼女の剣はただ一つ、命を奪うためではなく“解放”をもたらすためにあると確信を深める。
クライマックスは、要塞最深部にある神聖結社の聖壇で幕を開ける。カイザー・オーディンは反乱軍殲滅の最終兵器――“凍棄の符”を起動し、世界を凍りつかせようとする。だがそこへ、レイナの盟友セレン、エルの弟分ティオ、そして帝国残党の一人マルクが駆けつけ、絶体絶命の窮地から奇跡の逆転劇が生まれる。友情と裏切り、憎悪と赦しの刃が交錯し、やがてすべてを呑み込む大爆発が要塞を粉砕。
最後のページには、無数の英雄たちの犠牲を乗り越え、蒼氷に刻まれたひとすじの光――希望が映し出される。帝国も反乱軍も、もはや同じ大義の下で立ち上がる者たちの姿は、未来への扉を開く鍵となるだろう。
――我らの戦いは終わった。しかし、この物語がくれた熱き心の鼓動は、永遠に読者の胸に刻まれるに違いない。