寓話に生きた人イソップ ―その人生と13の物語 「ウサギとカメ」「北風と太陽」…… 2500年も前から世界で親しまれてきた寓話の数々。その作者イソップが、古代ギリシアに生きた奴隷だったことを知っていますか?物語の力で権力に立ち向かい、自由を手に入れたイソップ
古びた町の小さな書店で、若き作家の真琴は一冊の本に出会った。表紙には大きく「寓話に生きた人イソップ ―その人生と13の物語」と刻まれており、どこか懐かしくもあり、神秘的な光を放っていた。
真琴は店主の勧めでその本を手に取ると、すぐにページをめくった。物語は、古代ギリシャの石畳を歩むイソップ自身の生涯から始まる。貧しいながらも鋭い観察眼を持った男は、日常のささやかな出来事の中に深い真理を見出し、その知恵を寓話という形で人々に伝えていった。
読み進めるうちに、真琴は自分の心に問いかけるようになった。「もし、あの頃のイソップが現代に生きていたら、私たちにどんな教訓を授けるのだろうか?」本書は、彼の生涯とともに、合計13の寓話を通して、勇気、誠実さ、そして希望の大切さを描き出していた。
ある寓話では、賢くも哀愁を秘めたキツネが、己の過ちから学び成長する姿が、またある寓話では、正直な小鳥が、嵐の夜に自らの歌声で仲間を救う姿が描かれていた。そのどれもが、単なる物語ではなく、人生の道標のように、読む者の心にそっと寄り添った。
真琴はページを閉じると、まるでイソップの足跡を辿ったかのような気持ちに浸り、彼自身もまた新たな物語を書き始める決意を固めた。寓話に秘められた普遍の真理――それは、時を超え、心を照らす灯火であることを、彼はこの一冊から学んだのだった。