魔術師クノンは見えている7巻。盲目の天才が魔術で切り拓く前人未到の視界。MFコミックス・アライブ期待の最新刊は、飽くなき好奇心と創造力が織りなす至高の冒険譚。世界を美しく塗り替える魔法の真髄を耳と目で体感。

暗闇の中に、初めて一滴の青いインクを落としたような、静かで劇的な感動がここにあります。『魔術師クノンは見えている』第7巻を手に取ったとき、私は主人公クノンが抱く「見たい」という純粋な渇望が、どれほど強固な創造の力へと変わっていくのかを、改めてまざまざと見せつけられました。視力を持たない彼にとって、魔術とは単なる力の行使ではなく、世界に触れ、色彩を感じ、他者と繋がるための、かけがえのない感覚そのものです。
最新刊を読み進める中で、最も私の心を打ったのは、クノンの思考の自由さと、既存の概念に縛られない魔術へのアプローチです。実際に描写される彼の水魔術は、もはや攻撃の手段ではなく、空間を構築し、質感を再現するための芸術の域に達しています。見えないからこそ、彼は誰よりも深く世界の構造を観察し、想像力という翼を広げて未知の領域へと踏み出していく。そのひたむきな姿は、日々の生活の中で五感に頼り切り、多くの驚きを見過ごしている私たちに対し、世界はこんなにも驚きに満ちているのだということを、静かに、しかし情熱的に教えてくれます。
第7巻では、魔術学校での生活がさらに深まり、クノンを取り巻く人間模様もまた彩り豊かになっていきます。彼が放つ突拍子もないアイデアや、時折見せる年相応の少年の顔。実際に仲間たちと切磋琢磨し、時には周囲を呆れさせるほどの集中力で実験に没頭するシーンは、読む者の心に爽快な風を吹き込んでくれます。特筆すべきは、クノンが自分の境遇を悲劇として捉えるのではなく、未知を解き明かすための「自分だけの条件」として受け入れている強さです。その肯定的な生き様は、困難に直面するすべての人への、あまりに優しく力強いエールとなっています。
作画の美しさもまた、本作の魅力を支える重要な要素です。クノンが創り出す水の造形、魔力のゆらぎ、そして彼が想像の中で描き出す鮮やかな光景。それらが繊細な筆致で描かれているからこそ、読者はクノンの心の瞳を通じて、私たちが見ている以上の「鮮明な世界」を追体験することができるのです。
読み終えた後に残るのは、冷たい水に触れたときのような清涼感と、自分もまた何かを新しく創り出したいという、静かな情熱の種です。第7巻は、クノンの冒険が新たな次元へと進化していく重要なターニングポイントとなります。見えないはずの少年が、誰よりも深く世界を見つめる。その奇跡のような物語の続きを、あなたも共に見届けてみませんか。






















