夏目アラタの結婚 元ヤンで児童相談員の夏目アラタが切り出した、死刑囚への“プロポーズ”。その目的は、“品川ピエロ”の異名をもつ死刑囚、真珠に好かれ、消えた遺体を探し出すことだった。毎日1日20分の駆け引きに翻弄されるアラタは、やがて真珠のある言葉に
閉ざされた獄中の扉の向こうで、運命の歯車が狂い始める――
かつて日本中を震撼させた連続殺人事件。その黒い噂の影に、ひとりの死刑囚・品川真珠(黒島結菜)がいた。彼女は「品川ピエロ」として知られ、その不気味な笑顔と謎めいた生い立ちで、人々の心に恐怖と同時に奇妙な魅力を残していた。一方、元ヤンキーで児童相談所に勤める夏目アラタ(柳楽優弥)は、被害者の子どもたちの悲痛な叫びに応えるかのように、事件の真相を探るため、彼女との面会を敢行する。
しかし、最初の面会室は、冷たい現実と予想もしない衝動が交錯する舞台となる。アラタは、目の前に現れた華奢でありながらもどこか神秘的な雰囲気を漂わせる真珠に、思わず「俺と結婚しようぜ!」と口走る。その瞬間、二人の運命は激しく交差し、限られた20分間の面会という狭い空間で、奇妙な駆け引きと心の葛藤が始まるのだった。
堤幸彦監督が手掛ける本作『夏目アラタの結婚』は、乃木坂太郎の同名ベストセラーコミックを原作に、現代社会の闇と愛の不思議な可能性を鋭く描き出すサスペンス・ラブストーリーである。アラタは、真珠が抱える過去の謎や、連続殺人事件の真相に迫りながら、彼女の本当の姿、そして何よりも彼女が秘める「真実の愛」に触れていく。
獄中という閉ざされた空間、日々の短い面会時間、そして刑務所という非日常の中で繰り広げられる二人の心理戦は、見る者に強烈な緊張感とともに、人間の持つ弱さと美しさ、そして救済への渇望を映し出す。柳楽優弥と黒島結菜の圧倒的な演技が、狂気と優しさ、恐怖と希望を見事に融合させ、私たちに「愛とは何か」という問いを投げかける。
『夏目アラタの結婚』は、ただの犯罪サスペンスではなく、極めて異色な恋愛模様が織りなす、現代における究極のラヴ・ストーリーだ。獄中で芽生えた二人の関係は、社会の常識を覆し、愛と正義の境界線を問い直す。あなたもこの映画の中で、闇と光が交錯する不思議な世界へと足を踏み入れてみてはいかがだろうか。