【プロポーズ翌日の転落】恋とか愛とかやさしさなら:盗撮事件で一変する愛の行方。信じる、許す、愛するとは?欲望の闇に揺れる男女の葛藤を描く衝撃の恋愛小説。

プロポーズの翌日、最愛の恋人が盗撮で逮捕された――。カメラマンの新夏と啓久。永遠の愛を誓ったはずの二人の関係は、一瞬にして崩壊する。啓久の犯した罪、周囲を巻き込む波紋、そして新夏の苦悩。「二度としない」という言葉を信じ、許し、再び愛せるのか?男と女の欲望の深淵を抉る、著者新境地の恋愛小説。

プロポーズの翌日、人生最良の日から一転、奈落の底へと突き落とされる――。小学館から刊行された「恋とか愛とかやさしさなら」は、そんな衝撃的な幕開けを迎える恋愛小説です。著者は、人間の心の奥底に潜む複雑な感情を描き出すことに定評があり、本作では、愛と信頼、そして欲望という普遍的なテーマを、現代社会が抱える問題と絡めながら深く掘り下げています。

主人公は、カメラマンとして働く新夏。恋人の啓久とは交際して五年、互いを深く理解し、かけがえのない存在となっていました。そんな二人に、幸福の絶頂とも言える瞬間が訪れます。それは、多くの人が憧れる東京駅を舞台にした、ロマンチックなプロポーズ。新夏は迷うことなく啓久の申し出を受け入れ、二人は新たな人生を共に歩むことを誓い合います。

しかし、その喜びも束の間、翌日、信じられない出来事が新夏を襲います。啓久が通勤中に女子高生を盗撮したとして、警察に逮捕されたというのです。昨日まで愛を語り合っていた恋人が、まさか犯罪を犯していたとは――。新夏は、理解を超えた事態に言葉を失い、深い絶望と混乱に陥ります。

啓久は逮捕後、「二度としない」と新夏に誓います。出来心だったと弁明する啓久の言葉は、果たして真実なのでしょうか?新夏は、愛する啓久の言葉を信じたいと願いながらも、拭いきれない疑念と葛藤します。一度犯してしまった罪は、二人の間に深く暗い溝を刻み込み、これまで築き上げてきた関係を根底から揺るがします。

啓久の犯した罪は、新夏だけでなく、二人の友人や職場の人々など、周囲の人々をも巻き込み、思わぬ波紋を広げていきます。事件の真相が明らかになるにつれて、それぞれの人間関係や価値観が浮き彫りになり、登場人物たちの間に様々な感情が交錯します。

物語は、新夏の視点を通して、信じるとはどういうことなのか、許すとはどういうことなのか、そして、愛するとは一体何なのかという、根源的な問いを読者に投げかけます。啓久の犯した罪は決して許されるものではありませんが、それでも彼を愛し続ける新夏の心は複雑に揺れ動きます。過去の幸せな記憶、共に過ごした時間、そして、今もなお心に残る愛情。それらは、新夏を苦悩させ、前に進むことを躊躇させます。

著者は、新夏の心の葛藤を丁寧に描き出すことで、読者に共感と問いを与えます。もし自分が同じ立場に置かれたら、どうするだろうか?愛する人の過ちを、どこまで受け入れることができるのだろうか?人間の心の脆さや弱さ、そして、それでもなお人を愛そうとする強さが、鮮やかに描き出されていきます。

また、本作は、男と女の間に存在する欲望のブラックボックスにも深く切り込んでいます。啓久がなぜ盗撮という行為に及んでしまったのか。その動機や心理は、単純な出来心という言葉だけでは片付けられない、人間の深層心理に根ざしたものです。著者は、タブーとも言えるテーマに正面から向き合い、人間の欲望の複雑さや危うさを描き出すことで、読者に衝撃を与えます。

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「恋とか愛とかやさしさなら」は、単なる恋愛小説という枠には収まらない、社会的な問題意識も内包した作品と言えるでしょう。盗撮という犯罪が、被害者だけでなく、加害者とその周囲の人々の人生をも大きく狂わせてしまう現実を、改めて突きつけられます。

プロポーズという幸福の絶頂から一転、愛と信頼が崩壊していく様を描いた本作は、読者の心を深く揺さぶり、考えさせられることでしょう。信じることの難しさ、許すことの重さ、そして、それでもなお人を愛そうとする人間の心の強さ。著者の新たな境地となる本作は、現代の恋愛における普遍的なテーマを問い直し、読者の心に長く останется(残る)一冊となるはずです。