Audible版 深夜特急1: ―香港・マカオ―「あの旅」を斎藤工が全文読む――26歳の青年の人生を決定的に変えてしまった陸路二万キロが始まった!「ある朝、目を覚ました時、これはもうぐずぐずしていられない、と思ってしまったのだ」――そうしてはじまった旅は
音で旅する深夜特急──Audible版『深夜特急1: ―香港・マカオ―』
動き出す旅の衝動
羽田空港のロビー。
拓海(たくみ)は、ボードに映る行き先を眺めながら、スマートフォンを取り出した。
画面には、Audible版『深夜特急1: ―香港・マカオ―』の再生ボタン。
「旅に出る前に、まずは“音”で旅してみるか……」
そうつぶやきながら、イヤフォンを耳に差し込み、再生ボタンを押した。
──「青年は、片道航空券を手に香港へ降り立った……」
静かながらも力強い語り口に、拓海の心は一瞬で物語の中に引き込まれた。
バックパック一つで世界を駆ける旅人・沢木耕太郎。
ロンドンを目指しながら、最初の地・香港で出会う刺激的な街並み、人々、偶然の出来事。
カジノがきらめくマカオ、熱気に満ちた屋台の匂い、安宿の薄暗い灯り──
すべてが、リアルな音とともに耳の中で広がっていく。
拓海は、気がつけば空港のベンチに腰を下ろし、目を閉じていた。
「旅って、こういうことなんだよな……」
スマホの画面を見つめる。
自分が今から向かうのは、香港ではない。
けれど、この物語を聴いているだけで、心はすでに旅をしていた。
飛行機の搭乗アナウンスが流れる。
拓海はイヤフォンをつけたまま立ち上がり、搭乗口へと歩き出した。
──旅は、もう始まっている。
音とともに、どこまでも。
Audible版『深夜特急1: ―香港・マカオ―』──それは、耳で感じる旅の衝動。