雨のそぼ降る森から嵐の去った海辺、星降る岬へ──生命が歌い、無生物までも祝福に包まれる光景の中で、子どもの目に宿る「驚き」を呼び覚ます、レイチェル・カーソン珠玉の自然讃歌。

あなたは、雨粒が葉を伝い静かに森を満たす瞬間を思い出せますか。あるいは、激しい嵐が過ぎ去った後、荒波に洗われた砂浜で漂着物を探す楽しさを――。あるいは、透きとおる夜空を仰ぎ、岬の断崖に吹き渡る風に全身を委ねたことは? 本書『センス・オブ・ワンダー』は、そんな日常の中にひそむ自然の神秘を取り戻し、子どものような“驚きの感性”を再び開くための招待状です。

  1. 生命の祝福に満ちた風景

レイチェル・カーソンは、生物学者として厳密な観察と科学的洞察をもって自然を見つめました。しかし本書では、それらの知見を敢えて脇に置き、「雨に濡れた森で響く昆虫のさざめき」や「嵐の後にきらめく海辺の光景」が、感覚そのものを揺さぶるさまを詩情豊かに描きます。鳥のさえずり、草木の息吹、波音のリズム……それらはすべて、生きとし生けるものが贈る歓喜のシンフォニーです。

  1. 子どもたちへの贈り物としての自然

カーソンが強調するのは、自然とのふれあいが子どもにもたらす深い影響力。都市生活や人工物に囲まれた現代だからこそ、森や海、夜空といった“未知なる舞台”で遊ぶ体験が、子どもの好奇心を育み、科学的探究心の芽を育てると説きます。大人は往々にして「危ない」「面倒だ」と制限をかけがちですが、本書はその先入観を取り払い、親子で大自然のパノラマに飛び込む勇気を促します。

  1. 環境保護活動の原点にして未来への希望

50年以上前、カーソンは『沈黙の春』で農薬問題を暴き、現代の環境運動に火をつけました。本書『センス・オブ・ワンダー』は、その思想の原点ともいえる作品。自然の「驚き」を享受することで、私たちは地球を大切に守りたいという想いを自然に抱く──そうした循環を提案します。今や気候変動や生物多様性の危機を語る今だからこそ、ひとりひとりが自然に寄り添う心を取り戻すことが急務です。

  1. 文章の特徴と読みどころ

カーソンの筆致は、科学的正確さと詩的な描写が絶妙に融合。森羅万象を五感すべてで感じ取るような表現は、読む者をまるで現場に導くかのようです。また、本書には豊富なエッセイや手記が収められており、読後には身近な森や海岸がまったく新しい「驚きのステージ」に変貌を遂げていることでしょう。

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こんな方におすすめ

  • 都市での生活に息苦しさを感じ、自然との接点を求めている方
  • 子どもに本物の自然体験をさせたい保護者や教育者
  • 科学と詩情を両立させた文体に惹かれる読書愛好家
  • 環境保護の原点に立ち返り、地球への想いを新たにしたいすべての人

「センス・オブ・ワンダー」はただの自然エッセイではありません。そこには、時代を超えて響く“自然の声”が宿り、読む者の心に小さな奇跡をもたらします。雨の森で、嵐の後の浜辺で、星空の岬で、あなたもぜひ“驚き”の感性を取り戻し、その喜びに浸ってみてください。