『絞首商會』——戦後の混沌、闇市、そして怪人二十面相。江戸川乱歩の世界観を継承した、京極夏彦が描く「もう一つの世界」。探偵・明智小五郎も登場する傑作ミステリー。
昭和25年、戦後の混乱が残る東京。人々は闇市に集い、復興への希望と、生きることへの絶望が混ざり合う混沌とした日々を送っていました。そんな時代に、人々の間で密かにささやかれる奇妙な噂がありました。
「殺したい相手がいるなら、『絞首商會』に頼め」
依頼人の代わりに人殺しを請け負うという、謎の組織「絞首商會」。彼らが殺人の予告として送るのは、縄に吊るされた絞首台の絵葉書。その噂は、やがて東京を震撼させる連続殺人に発展していきます。
この事件に挑むのは、天才的な推理力を持つ探偵・明智小五郎。そして、彼と行動を共にする、若き日の探偵助手・小林少年。彼らの前に立ちはだかるのは、謎多き「絞首商會」だけではありません。人々を恐怖に陥れる、あの伝説の怪人、怪人二十面相の影もちらつき始めます。
この物語は、単なるミステリー小説ではありません。京極夏彦が、敬愛する江戸川乱歩の世界観を、戦後の日本という舞台で再構築した、いわば「もう一つの乱歩の世界」です。
昭和という時代特有の不穏な空気、怪しげな人間関係、そして、人々が心に抱える闇。それらが緻密に織りなされ、読者は物語の世界に一気に引き込まれます。京極夏彦ならではの、圧倒的な筆力と、複雑に張り巡らされた伏線は、読了後、深い余韻を残します。
特に注目すべきは、主要な登場人物たちの内面描写です。正義を追い求める明智小五郎の苦悩、そして彼を慕いながらも、どこか危うさを秘めた小林少年。彼らの人間関係が、物語に深みを与えています。そして、この物語の中心にいる「絞首商會」の正体とは。彼らはなぜ、依頼殺人を請け負うのか。その目的が明らかになった時、あなたはきっと驚きを隠せないでしょう。
「本当に人を殺したのか?」 「なぜ殺人を請け負うのか?」
読者は、物語のページをめくるたびに、いくつもの謎に直面します。そして、最後に明かされる真実は、あなたの倫理観を揺さぶるかもしれません。
この作品は、単なる謎解きではなく、人間の心理、欲望、そして社会の歪みを鋭く描き出した、深い人間ドラマでもあります。乱歩ファンはもちろん、京極作品の愛読者、そして本格ミステリーを愛するすべての人に読んでほしい一冊です。
さあ、あなたも『絞首商會』の世界に足を踏み入れ、闇の奥に潜む真実を目撃してみませんか?