こねこのいのち―忘れられない冬の日の思い出 ■ 第3回「キャッツ愛童話賞」グランプリ作品 いのちが軽々しく捨てられる時代――。いのちについて深く考えさせる一作。動物愛護精神と優しい心が育つ童話です。二人の優しい姉妹は、瀕死の状態の子猫を助けようと

冬の寒さが深まるある日のこと、町外れの小さな図書館で、一人の少年・直人はふと、埃をかぶった本棚の奥に一冊の本を見つけた。その表紙には、淡いブルーの背景に、白い筆で「こねこのいのち―忘れられない冬の日の思い出」と書かれており、まるで冬の静寂と温かな記憶を物語っているかのようだった。

直人は、ふとその本に手を伸ばし、ページをめくった。そこには、かつて小学生だった頃の自分と、優しい姉と共に出会った、一匹の小さな黒い子猫の物語が綴られていた。冷たい雪に包まれた道端で、凍えるような冬の日、二人は偶然にもその子猫を見つけ、助けることにした。子猫の小さな命が、厳しい冬の中でどんなに大切なものかを、幼い直人の心に深く刻んだのだ。

作者の高橋さくらさんは、この忘れがたい体験を、やさしくも切ない言葉で描いている。ページを進めるたびに、子猫と姉妹の絆、そして命の尊さが、静かな冬の情景とともに鮮やかに甦る。たとえ小さな命であっても、その温もりや輝きは、どんなに冷たい日々にも希望と生きる力をもたらすという、普遍的なメッセージが込められている。

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直人は本を読み進めるうちに、自分自身の記憶と照らし合わせ、かつて感じたあの温かな感情を再び思い出す。寒い冬の日、見知らぬ子猫に出会い、助けたあの日の決意と優しさ――それが今もなお、彼の中で生き続けているのだと実感する。

『こねこのいのち―忘れられない冬の日の思い出』は、ただの物語ではなく、誰もが持つ心の奥底にある「命への愛」や「思いやり」を呼び覚ます、かけがえのない一冊である。直人はその本を通して、冬の寒さに負けない温かい心の在り方を学び、これからも人や動物たちとのふれあいの中で、生きる力を育んでいこうと決意したのであった。