甘美なケーキの裏に隠された、因縁とトラウマのビターな謎！ イケメン揃いの洋菓子店で繰り広げられる、 元同級生シェフパティシエとの 複雑な愛憎劇と過去の事件を巡る、極上のヒューマンドラマ
アンティークの調度品に囲まれた、洒落た空間で営業する洋菓子店「アンティーク」。この店には、甘く美しいケーキの香りに誘われて人々が集まりますが、本当にこの店を特別な場所にしているのは、ケーキ職人ならぬ、並外れた個性を持つ四人のイケメンたちです。
物語は、店を開いたオーナーの橘のもとに、ある日、一人の天才的なパティシエが現れることから始まります。その人物こそ、小野。しかし、橘にとって彼は、高校時代に激しく振った、忘れがたき同級生（男！）でした。小野が自分を覚えていないことに胸を撫で下ろしつつ、その才能に魅せられた橘は、彼をシェフパティシエとして店に招き入れます。
ところが、この小野が、今や周囲を魅了してやまない「魔性のゲイ」にお育ちになっていたから、さあ大変。橘は、彼の甘い誘惑と迫力に翻弄され、毎日オソロシイ目に遭うことに……。このコメディと緊張感が入り混じる独特な関係性が、物語の大きな魅力の一つです。
私がこの作品を読んで強く引き込まれたのは、単なるイケメンたちの日常を描いた物語ではなく、それぞれの登場人物が抱える「過去の傷」、特にオーナーである橘の幼い頃の未解決の「事件」が、物語の根幹を成している点です。
四人の主要な登場人物—クールなオーナーの橘、魔性のパティシエ小野、小野に師事する元ボクサーのエイジ、そして秘密を抱えるギャルソンの千影—は、それぞれが個性的であると同時に、どこか欠落感や孤独を抱えています。彼らは「アンティーク」という甘い場所で出会い、ケーキを通して、そして時にはぶつかり合い、それぞれの心の傷を癒し、互いの人生を織り合わせていくのです。
天才パティシエ小野が作り出すケーキは、単なるスイーツではありません。それは、彼らの感情や出来事を反映した「特別なレシピ」であり、読者や客の心を深く揺さぶります。ケーキの甘さや美しさが、時に彼らの人生のビターな部分を際立たせるコントラストも絶妙です。
この作品は、ユーモア、サスペンス、そして深いヒューマンドラマが絶妙なバランスで融合した、まさにスペシャルな一品です。笑って、ドキドキして、そして最後には胸が熱くなる、彼らの作り出す人生のレシピを、ぜひご堪能ください。