『September 5』――1972年ミュンヘン五輪人質事件をライブ放送で追ったABCスポーツ・クルーの決断と葛藤を描く衝撃のヒューマン・ドラマ 人命が危険にさらされ、世界中が注目するなか、この実話に基づく重要な瞬間はジャーナリズムの形を大きく変えた。

本作は、1972年ミュンヘン五輪で発生したイスラエル人選手人質事件を、当時のABCスポーツ・クルーの視点で描いた実話ベースの歴史ドラマです。主演のピーター・サースガード演じるルーン・アーリッジ(Roone Arledge)は、スポーツ番組重視のテレビ局幹部として、救出交渉の最中にも放送スイッチを切らない判断を下します。一方、ジョン・マガロ演じるジェフ・メイソン(Geoffrey Mason)は、当日コントロールルームにいた若きプロデューサーとして、事態を世界に伝える重責を負います。これまでにない「人命と報道倫理の狭間」で葛藤する姿は、ニュース報道のあり方を大きく問い直すものとなりました。

作品概要

本作は、ティム・フェルバウム監督による2024年の歴史ドラマ・スリラー映画で、実際にアーカイブ映像も取り入れながら緊迫の一日を再現しています。上映時間は94分、ドイツ製作ながら英語とドイツ語のバイリンガル形式で展開します。

あらすじ

1972年のミュンヘン五輪初日、ABCスポーツは平和裏の番組制作を進めていました。しかし突如、パレスチナ武装組織「ブラック・セプテンバー」がイスラエル選手団を襲撃。コントロールルームにいたジェフ・メイソンは、現地翻訳のマリアンヌと連携しつつ、ルーン・アーリッジの指示でスイッチを切らずに生中継を続行します。銃声が聞こえる中、彼らは「視聴者に事実を伝える責任」と「人命への配慮」の間で揺れ動き、最終的に誤報と真実の狭間でニュースを訂正する決断を迫られます。

キャスト・スタッフ

  • ルーン・アーリッジ(Roone Arledge)役:ピーター・サースガード
  • ジェフ・メイソン(Geoffrey Mason)役:ジョン・マガロ
  • マリアンヌ・ゲバルト(翻訳者)役:レオニー・ベンシュ
  • ベン・チャップリン、ジネディン・スアレムほかが脇を固めます。

監督はティム・フェルバウム、脚本はフェルバウム他3名が担当。撮影監督はマルクス・フェルダー、編集はハンスヨルク・ヴァイスブリヒ、音楽はロレンツ・ダンゲルが手がけています。

映像の特徴と演出

ABC放送のコントロール室を忠実に再現したセットは、緊迫感を高めるキー要素です。実際のアーカイブ映像を挟み込みながら編集する手法は、ドキュメンタリー風の臨場感を創出。ライブ映像の切り替えや双方向通信の描写は、ニュースの最前線にいるような没入感を与えます。

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報道倫理への問いかけ

本作最大の見どころは「生中継を続ける判断」がもたらす倫理的ジレンマです。視聴者数約9億人という史上最大規模の放送を前に、スタッフは「命を守るために放送を止めるべきか/真実を隠さず伝えるべきか」の選択を迫られます。この瞬間が、ジャーナリズム史における“ライブ報道の原点”となったことが強調されています。

総評

キャストの熱演とリアルなセット、そして精緻な脚本が一体となり、「視聴率よりも報道の使命」という普遍的テーマを描き出す本作は、ニュース報道や映画を志す者必見の一作です。史実に基づく重厚なドラマながら、エンタメ性も失わない構成で、多くの観客に新たな視点を提供します。