ヒロアカ公式外伝「ヴィジランテ」:夢破れし者のヒーロー道 – 無個性の大学生が裏社会で出会う異端のヒーローたちと、正義のあり方を問う物語 無許可でゲリラライブを行う自称アイドル・ポップ☆ステップ、「クズ専門の”掃除屋”」に
大人気漫画『僕のヒーローアカデミア』(ヒロアカ)の世界観を共有する公式スピンオフ作品、『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』は、本編とは異なる視点からヒーローのあり方を描く異色の物語です。主人公の灰廻航一は、ヒーローに憧れながらもその夢を諦めてしまった、どこにでもいるような冴えない大学生。しかし、彼の心にはヒーローへの熱い想いが消えることなく、趣味としてオールマイトのコスプレ姿で街を徘徊し、人助けに精を出していました。
そんな平凡な日常を送っていた航一の人生は、ある日を境に大きく動き始めます。無許可でゲリラライブを行う自称アイドル・ポップ☆ステップとの出会い、そして「クズ専門の”掃除屋”」を名乗る謎の覆面男・ナックルダスターとの邂逅。この二人との出会いをきっかけに、航一は法に縛られない“ヴィジランテ”(自警団)としての活動に否応なく巻き込まれていくのです。
プロヒーローのように派手な個性(特殊能力)を持つわけでもなく、特別な訓練を受けたわけでもない航一。彼が頼れるのは、オールマイトへの憧憬と、人並み外れた正義感、そして持ち前の優しさです。ポップ☆ステップは、その歌声とパフォーマンスで人々に希望を与えようとしますが、その活動は常に警察の目を気にしながらの危険なものでした。そして、圧倒的な戦闘力を持つナックルダスターは、その目的や過去は謎に包まれていますが、独自の正義感に基づき、街の悪を一掃しようと暗躍しています。
法に定められたルールを守らず、独自のやり方で人々を救ける彼らの行動は、社会の秩序を乱す犯罪行為と見なされる可能性も孕んでいます。しかし、プロヒーローの手が届かない場所で、本当に困っている人々を救っているのもまた事実です。彼らは、社会にとっての秩序破壊者なのか、それとも既存のヒーローシステムでは救いきれない人々にとっての最後の希望なのか。本作は、読者に「正義とは何か」「ヒーローとは何か」という根源的な問いを投げかけます。
本編の『ヒロアカ』では、ヒーロー科の生徒たちが成長していく姿が描かれていますが、『ヴィジランテ』では、ヒーローを目指しながらも挫折した者、あるいは既存のシステムに疑問を持つ者たちの視点から、ヒーロー社会の裏側や矛盾を描き出しています。それゆえ、本編のファンはもちろんのこと、より深く、多角的に『ヒロアカ』の世界を楽しみたい読者にとっても、見逃せない作品と言えるでしょう。
“非合法ヒーロー”という異質な存在を通して、ヒーローの定義や社会のあり方を問い直す『ヴィジランテ』。その熱く、時に切ない物語は、読者の心を掴み、新たな視点を与えてくれるはずです。