元レディースが脳神経外科医に。親友の死と恩師の叱咤を胸に、ヤンキー娘が猛勉強で掴んだ名医への道。旧態依然とした白い巨塔をパワフルに改革する、命と情熱の痛快医療エンターテインメント「ヤンドク!」の魅力。

かつて特攻服をまとい、バイクの爆音とともに夜の街を駆け抜けていた少女が、今は冷徹な判断と繊細な指先が求められる脳神経外科の執刀医として、生と死の境界線に立っています。「ヤンドク!」の主人公、田上湖音波の物語は、単なる立身出世の物語ではありません。それは、絶望のどん底で突きつけられた「命をどう使うか」という問いに対する、一人の女性の魂の回答です。
物語の原点は、16歳の夏に起きた悲劇的な事故にあります。共に走っていた無二の親友を亡くし、自らも重傷を負った湖音波。身も心もボロボロになった彼女を救い、そして厳しく叱責したのが、医師の中田啓介でした。「助かった命を真剣に考えろ」という彼の言葉は、迷走していた彼女の心に深く刺さり、生きる目的を鮮明に描き出しました。そこから始まった、睡眠時間を削り、血の滲むような猛勉強の日々。かつての反骨精神をすべて「学ぶこと」へと転換させた彼女の執念は、読む者の胸を熱くさせずにはいられません。
実際に作品を追っていくと、脳神経外科医となった湖音波の姿に圧倒的なカタルシスを感じます。彼女は、メスを握る「外科手術」と、最新の「血管内カテーテル治療」の双方を完璧にこなす、数少ない二刀流の名医へと成長しました。医療現場に蔓延る旧態依然とした権威主義や、硬直した派閥争い。そんな「白い巨塔」の壁を、元ヤンキーならではの真っ直ぐな情熱と、誰にも文句を言わせない確かな技術で次々と打ち破っていく姿は、まさに痛快そのものです。
特筆すべきは、彼女が患者に寄り添う際に見せる、剥き出しの人間愛です。親友を救えなかった後悔を背負っているからこそ、目の前の命に対して一切の妥協を許さない。エリート医師たちが忘れがちな「患者の人生そのものを救う」という視点を、彼女は決して手放しません。時には乱暴な言葉が飛び出すこともありますが、その裏にある真摯な願いに触れたとき、周囲の医師たちも、そして私たち読者も、彼女を認めざるを得なくなるのです。
読後感は、まるで激しい嵐が去った後の晴天のような清々しさに満ちています。どんな過去を持っていても、どれほど遠回りをしても、信念があれば道は拓ける。湖音波が放つパワフルなエネルギーは、閉塞感を感じている現代社会の私たちに、もう一度前を向く勇気を与えてくれます。医療ドラマとしてのリアリティと、極上のエンターテインメント性が融合したこの物語。
一人の女性が、失った親友への想いを力に変えて、命の最前線で戦い続ける軌跡。その熱き鼓動を、ぜひあなたの心で直接感じ取ってください。読み終えたとき、あなたもまた、自分の命をどう使うべきか、静かに自問しているはずです。





















