衝撃の実話「でっちあげ」映画化。殺人教師の烙印を押された男の絶望と真実を問うミステリー。綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也が挑む前代未聞の冤罪劇。正義の名の下に行われる集団心理の暴走と、逆転の法廷に魂が震える。

信じていた世界が、たった一つの「言葉」によって崩落していく。そんな底知れぬ恐怖を、これほどまでに残酷に、そして緻密に描き出した作品がかつてあったでしょうか。映画「でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男」は、2003年に実際に起きた事件をベースに、善意という名の狂気が一人の人間を社会的に抹殺していく過程を冷徹に映し出します。私たちは、正義の味方の顔をして、誰かの人生をすり潰していないか。その問いが、観る者の胸に深く突き刺さります。
物語は、小学校教諭の薮下誠一が、ある保護者からの告発を受けるところから始まります。その内容は、児童への聞くに耐えない虐めと体罰。週刊誌による実名報道が火に油を注ぎ、世論は一気に薮下を「殺人教師」として断罪します。テレビから流れる過激な批判、執拗な誹謗中傷、そして信頼していた同僚たちの裏切り。綾野剛演じる薮下が、何層もの絶望に押し潰され、日常が粉々に砕け散っていく様は、正視できないほどの痛々しさを伴います。
一方、被害者を自称する母・律子を演じる柴咲コウの、聖母のような慈愛と狂気が混在する演技は圧巻です。彼女を救おうと結成された550人もの巨大弁護団。それは、誰もが「自分たちは正しいことをしている」と確信していた証でもあります。集団心理が生み出す圧倒的な熱量が、一人の個人を追い詰めていく光景は、現代のSNS社会における炎上や私刑の構図と重なり、背筋が凍るような既視感を抱かせます。
実際にこの物語を追っていくと、私たちは記者・鳴海の視点と同じように、提示される「正義」に翻弄されます。過激な言葉で飾られた記事が世間を震撼させる快感と、その裏にある真実の危うさ。しかし、物語が法廷へと場を移したとき、事態は誰もが予想しなかった局面を迎えます。薮下の口から告げられた「すべて事実無根のでっちあげ」という完全否認。その一言から、盤石に見えたはずの「正義の物語」が、パラパラと剥がれ落ちていくのです。
真実はどこにあるのか。それとも、私たちは最初から「見たい真実」しか見ていなかったのか。法廷という密室で繰り広げられる、記憶と嘘の応酬。一人の男の人生を賭けた逆転の闘いは、単なるエンターテインメントを超え、私たちの「良心」の在り方を厳しく問い直してきます。
読み終えたとき、そして観終えたとき、あなたの心には決して消えない澱のような感情が残るはずです。真実を疑うことの苦しみと、それでも真実を追い求めることの尊さ。2025年、この衝撃作が暴き出すのは、人間の心の奥底に潜む「正義という名の怪物」の正体です。この残酷で、けれど目を逸らしてはならない物語を、ぜひあなたの魂で受け止めてください。






















