【本格ミステリー異聞】稀代の憑物落とし・中禅寺秋彦が高校で「物怪」を講義する！不可解な事件と都市伝説を論理で斬る、京極堂サーガの新境地。論理と怪異が交錯する探偵講義録の深淵な魅力に迫る！
京極堂、高校教師になる！『中禅寺先生物怪講義録』が示す、論理と怪異の美しい調和
この物語の主人公は、京極夏彦氏の代表作『百鬼夜行』シリーズにおいて、古本屋にして「憑物落とし」という異色の肩書きを持つあの中禅寺秋彦、通称京極堂です。彼は、世に蔓延る不可解な事件や怪異を、徹底的な論理と科学的な視点から解体し、「この世には不思議なことなど何もない」と断言する希代の探偵です。
その京極堂が、本作ではなんと、高校の倫理教師として教壇に立っています。
『中禅寺先生物怪講義録』は、教師となった中禅寺秋彦が、生徒たちが持ち込む、あるいは学園内で発生する様々な「怪異」や「不可解な事件」を、自身の講義を通して解き明かしていくという、異色のミステリー作品です。
生徒たちが語る都市伝説、怪談、そして時に起こる奇妙な出来事。それらは一見、科学や論理では説明できない「物怪（もののけ）」の仕業に見えます。しかし、中禅寺先生は、そうした怪異を決して否定しません。
彼の魅力は、怪異の存在を認めつつも、その背後にある人間の心理、社会の歪み、そして誤った認識の構造を、圧倒的な知識と鮮やかな論理展開で紐解いていく点にあります。「謎を解いてしまうから」というタイトルが示す通り、先生の言葉一つ一つが、聴く者の心を惑わす呪いを祓う「憑物落とし」の役割を果たします。
読者として、私たちは生徒たちと共に教室で中禅寺先生の講義を聴いているような感覚に陥ります。日本の歴史、文化、宗教学、心理学といった幅広い知識が織り交ぜられた彼の解説は、ただの謎解きを超えた、深遠な哲学的な問いかけを投げかけてきます。
この作品の面白さは、ミステリーファンを唸らせる精緻なロジックと、思春期の高校生たちが抱える普遍的な悩みや心の闇が、「物怪」というフィルターを通して描かれる点にあります。怪異は、若者たちの不安や葛藤、そして歪んだ欲望の「形」として現れ、中禅寺先生はそれを論理のメスで切り開きます。
京極堂の持つ独特の静謐な雰囲気と、学園という日常的な舞台設定のコントラストが、作品に独特の緊張感とユーモアを生み出しています。京極堂ファンはもちろん、知識欲を刺激される上質なミステリーを求める全ての方に、ぜひこの「物怪講義」の扉を開けていただきたいと強く感じます。きっと、あなたの世界観が変わる、知的で刺激的な体験となるでしょう。