【本屋大賞受賞作】言葉に命を懸ける人々の物語『舟を編む』|変わり者の辞書編集者・馬締光也が挑む15年越しの辞書編纂プロジェクト「大渡海」|言葉のプロが「愛の言葉」を探す、不器用で心温まるヒューマンドラマの傑作
海を渡る「舟」を編む。辞書づくりに人生を捧げる人々の、感動の物語
私たちが日々何気なく使っている「言葉」。その言葉の海を渡るための「舟」を、一途に、そして情熱的に編み続ける人々の物語、それが『舟を編む』です。
舞台は、老舗出版社・玄武書房。営業部で変わり者として持て余されていた青年、馬締光也(まじめ みつや)は、言葉に対する天才的なセンスと、辞書づくりへの並外れた情熱を辞書編集部のベテランに見出され、晴れてその一員となります。
彼らの壮大なプロジェクトは、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」の編纂。見出し語は24万語、完成までにかかる歳月は15年という、気の遠くなるような作業です。これは、単なる言葉の羅列ではなく、「今を生きる辞書」を創り出すという、時代と心をつなぐ挑戦の物語です。
辞書という名の「大渡海」への長い旅
辞書編集部とは、「言葉の番人」たちが集う個性派ぞろいの場所です。
- 馬締光也:人と話すのは苦手だが、言葉を愛し、その意味を深く追求する天才肌。
- ベテラン編集者:長年の知識と経験を持つ、言葉への深い敬意を抱く師のような存在。
- 個性豊かな仲間たち:それぞれの知識とこだわりを持ち寄り、互いにぶつかり合い、支え合いながら、一語一語と向き合っていきます。
彼らの作業は地道で、途方もないものです。一見、華やかさとは無縁に見える辞書編纂の世界ですが、そこには「言葉の海」という無限の広がりの中で、正確な意味を捉え、適切な表現を探し出す、知的な冒険と、職人芸のような誇りがあります。
この物語は、そんな彼らが、辞書という巨大な舟を、時に嵐に遭いながらも、15年という歳月をかけて編み上げていく、熱く、そして感動的な軌跡を描きます。
言葉のプロが迷う「愛の言葉」
言葉のプロである馬締光也にも、大きな壁が立ちはだかります。それは、運命の女性との出会いです。
辞書に載せる24万語の意味を、一つ一つ正確に定義できる馬締ですが、心の中で燃える彼女への「気持ち」を伝えるのにふさわしい「言葉」が見つかりません。
- 理屈と感情のギャップ:言葉を論理的に扱うプロとしての顔と、自分の感情を伝えることに不器用な一人の人間としての顔。
- 恋の苦悩:自分の想いを正しく、そして熱く伝える最適な言葉は何か?
辞書づくりという大きなプロジェクトと並行して描かれる、馬締の不器用で純粋な恋の行方は、多くの読者の共感を呼び、物語に温かさと人間味を与えています。
人生という名の「大渡海」を渡るために
問題が山積みの辞書編集部。果たして、彼らの命を懸けた「大渡海」は、時代の荒波を乗り越えて完成するのでしょうか?そして、言葉の壁にぶつかった馬締の愛の思いは、運命の女性に届くのでしょうか?
『舟を編む』は、一途に何かを極めることの尊さ、そして言葉が持つ無限の力を再認識させてくれる傑作です。私たちが生きる上で不可欠な「言葉」という存在に、改めて感謝の念を抱かせてくれる、心に響くヒューマンドラマです。
ぜひこの物語を通して、言葉の海を渡るための「舟」を編む人々の情熱を感じてください。