「主婦」という名の見えない苦悩と戦う私へ。上野千鶴子氏との対話が切り開く、閉塞した日常の突破口。自己肯定感を育む当事者研究の力。現代女性の心の叫びと、自分らしさを取り戻すための知的冒険と感動の記録。
上野さん、私の「見えない労働」を言語化してください
「主婦」という役割は、社会的に軽視されがちです。家事、育児、介護、近所付き合い、そして夫のサポート。これらはすべて、報酬のない、「見えない労働」として積み重なり、気づかぬうちに私たちの心と体を蝕んでいきます。私は長年、「なんで私ばかり」という漠然とした不満と、誰にも理解されない孤独感に苛まれてきました。
そんな閉塞した日常を打ち破るきっかけとなったのが、社会学の巨星、上野千鶴子氏に投げかけた一つの問い、「主婦の私の当事者研究につきあってください」でした。これは、単なる著名人への依頼ではなく、「私の苦しみに、知的な光を当ててほしい」という、切実な叫びでした。
上野氏との対話を通じて私が感じたのは、まず「自分の痛みが、学問の俎上に乗せられる」という、深い感動と解放感です。これまで個人的な「愚痴」や「悩み」として片付けられていた感情や経験が、「当事者研究」という厳密なフレームワークの中で、冷静かつ客観的に分析されていく過程は、まさに知的セラピーでした。
例えば、「名もなき家事」の負荷について言語化するとき、上野さんの鋭い視点が、そのタスクの多角性と複雑さを明確にしてくれました。「察する」「先回りする」「機嫌をとる」といった、感情労働の側面までが可視化されたとき、私は初めて「これは怠けているのではない、過重労働なのだ」と、自分を肯定することができたのです。
この研究は、私の自己肯定感を劇的に高めてくれました。自分の経験を「データ」として捉え直すことで、感情的に巻き込まれすぎることなく、一歩引いた視点から問題に対処する「知恵」を身につけることができたのです。以前は、家が散らかっていると自分自身が「ダメな主婦」だと感じていましたが、今では「これは、家事の構造的欠陥が引き起こしている現象だ」と、冷静に状況を分析できるようになりました。
この対話と研究の記録は、今、同じように孤独と不満を抱えるすべての主婦にとって、自分を理解し、自己を解放するための地図となるでしょう。私たちの経験は、価値があり、研究されるに値するテーマなのです。
この当事者研究は、私に「主婦」という役割を演じるのではなく、「自分らしい人生を創造する主体」として生きる勇気を与えてくれました。上野さんとの対話は、単なる知識の交換ではなく、私という個人が、社会構造の中で抱える痛みを乗り越え、真の自由と尊厳を取り戻すための、感動的な旅路だったのです。