【元看護師が描く涙の物語】ナースの卯月に視えるもの：長期療養病棟で出会う患者たちの「思い残し」。心残りを解き明かし、小さな奇跡を起こすナースの奮闘を描く、感涙必至のお仕事ミステリー！
元看護師の著者が贈る、命の物語。長期療養型病棟に勤める看護師・卯月咲笑には、患者の「思い残し」である見知らぬ姿が見える。彼らの心残りを解きほぐし、より良い看護を目指す卯月の周りで起こる、心温まる小さな奇跡の数々。命の尊さ、人との繋がりの大切さを教えてくれる、感涙必至のお仕事ミステリー！
文藝春秋から刊行された「ナースの卯月に視えるもの」は、元看護師である著者が自身の経験を 바탕으로（もとに）、長期療養型病棟を舞台に描いた、心温まるお仕事ミステリーです。完治の望めない人々が集う場所で、看護師として働く主人公・卯月咲笑（うづきえみ）には、他の人には見えない特別なものが見えていました。それは、意識不明の患者や、もうこの世にはいない人々の「思い残し」の姿だったのです。
物語は、卯月がいつものように病棟で患者のケアにあたっている日常から始まります。ある日、意識不明の男性患者のベッドの脇に、見慣れない小さな女の子の姿が立っていることに気づきます。それは、他の看護師や医師には全く見えない存在。卯月だけが視認できる、患者の「思い残し」でした。
最初は戸惑いを隠せない卯月でしたが、その女の子の悲しげな表情や、患者への切ない眼差しから、彼女が何かを伝えようとしていることを感じ取ります。患者の心残りを解きほぐすことが、患者本人だけでなく、その周りの人々にとっても大切なのではないか――そう考えた卯月は、自分にしかできない方法で、彼らの心残りを解消し、少しでも穏やかな最期を迎えられるように奔走することを決意します。
物語は、様々な患者たちの「思い残し」と、それに向き合う卯月の姿を中心に展開していきます。幼い子供を遺して逝ってしまった母親の心残り、長年連れ添った妻に伝えられなかった感謝の言葉、果たせなかった夢への未練……。それぞれの患者が抱える後悔や未練は様々ですが、卯月は、患者のわずかな言葉や表情、そして見える「思い残し」の姿から、彼らの本当の願いを丁寧に探り出していきます。
卯月の方法は、決して派手なものではありません。患者の家族や友人との会話の中からヒントを見つけたり、過去の記録を丹念に調べたり、時には患者が好きだった音楽をそっと流してみたり……。地道な努力と、患者一人ひとりに寄り添う温かい心が、閉ざされた彼らの心の扉を少しずつ開いていくのです。
物語の中で、卯月は様々な困難に直面します。患者の心残りがなかなか見つからなかったり、周囲のスタッフに理解してもらえなかったり、時には患者の家族との間で意見が衝突したりすることもあります。それでも卯月は、患者のため、そして残された人々のために、諦めることなく奔走します。そのひたむきな姿は、読者の心を強く打つでしょう。
「ナースの卯月に視えるもの」は、単なるミステリーとしてだけでなく、医療現場のリアルな描写や、看護師という仕事の厳しさ、そしてやりがいも丁寧に描かれています。元看護師である著者ならではの視点が、物語に深みとリアリティを与え、読者はまるで実際に長期療養型病棟で働く看護師たちの日常を垣間見ているような感覚を覚えるでしょう。
物語全体を包むのは、切なさや悲しみだけではありません。患者の心残りが解消された時の安堵感や、それによって患者やその家族が見せる笑顔は、読者の心を温かく照らします。卯月が起こす小さな奇跡は、決して大げさなものではありませんが、関わる人々の心を優しく癒し、明日への希望を与えてくれます。
また、本作は、命の尊さや、人との繋がりの大切さといった、普遍的なテーマを深く考えさせてくれます。人は、生きている間に様々な思いを残してこの世を去ります。その思いを受け止め、繋いでいくことの大切さを、卯月の行動を通して教えてくれるのです。
読者は、卯月と共に患者たちの心残りを解き明かす中で、涙したり、心が温まったり、そして、生きることの意味を改めて考えさせられるでしょう。感涙必至と銘打たれた本作は、読み終えた後も、いつまでも心に残る、優しくも力強いメッセージを届けてくれます。
「ナースの卯月に視えるもの」は、ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、人間ドラマとしての深み、そして感動的な要素を兼ね備えた、まさに жанр（ジャンル）を超えた魅力を持つ作品です。日々の忙しさの中で忘れかけていた大切な何かを思い出させてくれる、そんな心温まる物語を、ぜひ手に取ってみてください。