来春までお鳥見女房シリーズ第7弾Audible完全版。諸田玲子が贈る江戸の情緒と家族の絆。鳥を愛で悪を討つ凛とした女主人公の活躍を耳で味わう。季節の移ろいと深い感動が響き渡る時代小説オーディオブックの決定版。

木々が葉を落とし、冷たい風が江戸の町を吹き抜ける季節。その静寂の中で、鳥たちのさえずりに耳を澄ませ、ささやかな日常の幸せを守ろうとする人々がいます。諸田玲子氏の人気シリーズ第7弾『来春まで』をAudibleで聴き始めたとき、私は物語の幕開けと共に、冬の凛とした空気感と、登場人物たちの肌の温もりまでもが伝わってくるような深い没入感に包まれました。活字で読むとき以上に、朗読者の声が織りなす「間」が、江戸の情緒をより豊かに、より鮮やかに描き出しています。

本作の主人公、お鳥見役の妻・珠世。彼女の清廉でいて芯の強い生き様は、声という命を吹き込まれることで、より一層の輝きを放ちます。家事や育児に奮闘しながらも、夫を支え、鳥たちの生態を見守る。その日々の中に忍び寄る不穏な事件や、人間模様の縮図。実際に、日常の喧騒を離れてこの物語に耳を傾けていると、珠世の視線を通じて見る江戸の景色が、まるで今そこに存在するかのように私の周囲に広がっていきます。特に、冬を越そうとする渡り鳥たちの姿と、懸命に生きる市井の人々の姿が重なり合う描写には、胸が熱くなるほどの共感を覚えました。

Audible版の素晴らしさは、時代小説特有の美しい日本語の響きを、純粋に「音」として享受できる点にあります。江戸言葉の粋な言い回しや、鳥の羽音を思わせる繊細な擬音。それらが耳から直接脳へと届くたび、私の想像力は文字の制約を超えて、無限に広がっていきました。実際に聴き進めていく中で、事件の真相に迫る緊張感と、家族を想う温かな情愛の対比が、朗読の緩急によって見事に表現されており、物語の幕が閉じるのを惜しむような、静かな余韻が長く心に留まりました。

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「来春まで」という言葉に込められた、切なくも希望に満ちた祈り。それは、厳しい冬を耐え忍び、いつか必ず訪れる光を待つ、すべての日本人の心に響くメッセージでもあります。忙しない現代社会に生きる私たちにとって、珠世たちが大切にしている「季節を愛でる心」は、忘れかけていた心のゆとりを思い出させてくれます。

読み終えた、あるいは聴き終えた後に残るのは、冷たい北風の向こう側に、確かに春の兆しを感じるような清々しい充足感です。このAudible版は、あなたの日常に、江戸の風と鳥たちの歌声を届けてくれるでしょう。美しい言葉に抱かれ、心温まる物語の世界へと旅立ってみませんか。珠世と共に過ごすその時間は、あなたの心を優しく、そして強く整えてくれるはずです。